ちょっとした事件だった。
おじさんタレントが泣きそうな声で電話してきた。
「この間の女が、自分がセックスXしてる時の
ビデオが欲しいっていうもんで、その場の雰囲気であげちゃった。大丈夫だろう?」
大丈夫なはずがない。あれほど
タレントはいつも、万が一があっては困るので行動は慎重にと、口癖のように言っていた本人が、信じられないミスを犯した。
淫靡な快楽は、一流の判断力をも吹き飛ばしてしまうのか。
おじさんタレントは、自身が安心するため、私に子供のような質問を矢継ぎ早に聞いてくる。
「あの女は、ああみえて根が真面目だから、大丈夫だろう。」
「俺に対して
裏切るようなまねはしないよ、きっと。」
「マジで俺に惚れてるからな。旦那よりもすごくいいって言ってたよ。」
もう、一流
タレントの面影もない。
溜まった不安を私にぶつけ終わると静かに背中を向け、その背中越しに、私は、最悪のシナリオを彼に言った。